アーユルヴェーダ
壮大な生命の科学
井上眼科病院院長
若倉雅登
20世紀、西洋医学は臨床医学を席巻し、抗炎、抗癌、抗菌と、アンチ型の治療学が花形となった。それは、神の領域を侵すほどの成果を収めた一方、不可逆的副作用や病原体の逆襲という、猛烈な反抗にも直面した。そして西洋医学と並行に発展した文明社会は、環境破壊や化学物質の氾濫に伴う心身の不調という、新しい病気を人間にもたらした。 西洋医学を否定するつもりはさらさらないが、「神経保護治療」「維持治療」といった言葉で、遠慮がちながら、西洋医学自らがその限界を認め、さらには「代替医療」の西洋医学的検証が一流医学誌に掲載される昨今である。
本書は、代替医療で必ず挙げられる壮大なインド伝承医学「アーユルヴェーダ」を我々の前に開示してくれる。代替医療ばかりでなく、そこには次世代の医学のあり方を考えさせるさまざまな切り口があるはずで、それを日本語で読めるのだから楽しみである。
「人間と歴史社」によるこの画期的出版は、出版界が売らんかなの商業出版ばかりに走り、出版モラルが失われつつあるように感じていた矢先の偉業であり、意のある医療者は大いに支援すべきだと思う。