稲垣足穂の単行本三点,解説の抜粋掲載

 


稲垣足穂の単行本三点の表紙写真

 

 

稲生家=化物コンクール

「山ン本……」は古物語の書き換えであるが、足穂文学の中心主題を暗示するきわめて大切なカタストロフによって、見事に自家薬籠中のものになっている。かくて「A感覚とV感覚」の論理的建築物へ入っていくのである。三島由紀夫(『日本の文学・内田百閨E牧野真一、稲垣足穂・34』中央公論社 解説より)

稲垣足穂著 新書変型版並製箱入218頁
税込1835円  ISBN4-89007-064-8

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タルホ大阪・明石年代記

「芦の都シリーズ」「パテェの赤い雄鶏を求めて」「明石」他収録。歯科医の家に生まれた足穂のゆたかな少年時代が蘇る。シネマトグラフ、日露戦争のフィルム、エァロプレーン、パテェの赤い雄鶏などを通して「取戻せない日々」を嗅ぎ、記憶の中から香りあるものをたぐり寄せる。

稲垣足穂著 A5判上製 312頁 /
税込3059円  ISBN4 89007-068-0 C0095

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びっくりしたお父さん

「童話の天文学者」「壜詰奇談」「蘇迷蘆」「水晶物語」「よりどり前菜(オードブル)」他収録。地球上のいずこでもないが、いずれにでもあって行こうと思えば誰でも行くことができるところ。−夢の結晶の世界。モダニズムの拠点「新青年」を主要舞台に発表した怪奇とファンタジーのヴァリアント。

稲垣足穂著 四六判上製 382頁 /
税込3262円 ISBN4 89007-067-2 C0093

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足穂は木村荘八著の『未来派解説』によって未来派に出会うと同時に、いち早くベルグソン哲学をかぎつけた。未来派は「時間と空間は既にきのう死んだ」とするが、マリネッティはベルグソンを取りこんでいるのだ。(中略)

足穂はさらにベルグソンの精神と物質の交錯を通して「歪み」の概念を導入し、物質は人間の精神力(Energie spirituelle)に他ならぬとする。(中略)

ベルグソンの精神力は実はイギリスのスピリチュアリズムと深い関係にあった。SPRの第一六代会長にまつられたほどである。

このSPRに大いに関係があるオリヴァ・ロッヂ卿は足穂の作品にはまず「星造りの花火」の謎である「鬼神の円筒」をつきつめようとするところで登場する。「星を造る人」が最初ということになる。

さらに「近代物理学とパル教授の錯覚」にやはり「星造りの花火」の秘密を探ろうと熱中した一人としてコナン・ドイルとともにロッヂ卿が記されている。

やがてロッヂ卿は「弥勒」中にSPR即ち心霊学の領域を開いた人物として紹介される。(中略)

ロッヂ卿は人間の死後存続、すなわち人間知性と個性的人格が肉体の死を超えて持続するという仮説を立てた。いくつかの例をあげてその証拠としている。

その一つは『死後の生存』であり、もう一冊は戦死したロッヂの末子との交霊通信をまとめた『レイモンド』である・・・・(以下略)

高橋康雄
  『びっくりしたお父さん』への解説「足穂と未来派の舞台としての『新成年』」より抜粋。

オリヴァー・ロッジ作『レイモンド』はこちら

 

 

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