写真集  「らい予防法」の傷痕――日本・韓国・台湾

八重樫信之撮影 / B4変形版132頁
ISBN4-89007-163-6 C0072 / 税込み2625

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《DAYS国際フォトジャーナリズム大賞》 審査員特別賞受賞作品

「らい予防法」が施行されて100年―。本書は「強制隔離」によって、肉親との絆を絶たれ、仮借なき偏見と差別を生きた人々の、いわば「黙示録」である。そしてアジアの地に今なお残る「らい予防法」の傷痕を浮き彫りにしたドキュメントでもある。ここに出てくる元患者らの証言とポートレートは、見る人の魂を揺さぶるほどの重みをもつ。

それは「らい」ゆえに、子どもを他人の手にゆだね、故郷を捨て去るを得なかった人々、職を奪われ、戸籍名を捨てて生きた人々、らい病者であることをことさらに隠して生きねばならなかった人々の悲痛な叫びが伝わってくるからである。一方で、患者迫害の責任は誰にあるのか―という重いメッセージとともに、これほどの悲惨を黙視してきた責任が誰にあるのかを、この写真集は問いかけている。

元患者の表情、収容施設の模様を伝える日本65点、韓国15点、台湾14点、計94点の写真(モノクロ)を収録。キャプションと元患者の証言には韓国語訳を付す。『証言・日本人の過ち』、『証言・自分が変わる 社会を変える』を視覚的に理解するために最適の書。

 


「ハンセン病」のために家族から縁を切られ、自分を消して生きてきた人たちが、死んでも遺骨を引き取ってもらえず、名前も隠さなければならない。しかも、偽名を使っている人が多いという。この人たちに生きてきた証はあるのだろうか?――。

当時新聞社のカメラマンだった私は、障害のある人の写真は、後姿か顔を写さないことが人権に配慮した撮り方だと思い込んでいた。しかし、はたして顔のない写真がその人の人権を守り、社会に訴える力になるのか?――。

この写真集に出てくる人たちの中で、すでに5人が亡くなった。ハンセン病のシンボルともいえる「熊本菊池恵楓園」の厚い壁の一部や、岡山「長島愛生園」の軽症独身女子寮など、古い建造物もいつのまにか取り壊されてしまった。

後々の世に、世界に例のない、90年にわたる人権侵害の歴史が語り継がれ、再び同じ過ちを繰り返さないために、本書を記録として残したい。

発刊にあたって(八重樫信之)より抜粋 

 

朝日新聞2006年7月9日読書欄掲載書評記事

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