ターミナルケア死生観関連書籍

  

生きる。生きる「今」を支える医療と福祉 

岡安大仁・市川一宏編 / A5判並製240頁 / 
税込2100円 / ISBN4-89007-151-2 C0030 

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「まさに今は、「大心災」を想定させる時代。家族や地域のかつての姿が崩れ去り、自殺、孤立、介護地獄、虐待、精神的不安等のたくさんの解決困難な問題が生み出されています。(中略)

医療と社会福祉は、病院や社会福祉施設、在宅医療や在宅福祉の現場において、この問題にどのように応えてきたのでしょうか。生命の危機には医療が対応してきました。経済的貧困、介護や養育、孤立、不安等の生活の危機に対しては、社会福祉が対応し、実績を積み重ねてきたことは事実です。

しかし、生き方・人生には何が対応してきたのでしょうか。今、医療と社会福祉は、利用者の生き方・存在にいかに対応してきたかが問われているのです。利用者の生き方にまむかい、その存在を支え、「生きる」という姿を支えてきたか問いかけられてきているのです。」―「あとがきにかえて」より 市川一宏

生きる。生きる「今」を支える医療と福祉 

簡略もくじ 詳細もくじはこちら

生きる「今」と向き合う ―「生きる」視座に立った医療

岡安大仁

「はじまりの記憶」―子どもの「生きる」かたち

白井徳満

「今日」からの生き方で余命が変わる

中島宏昭

「ガン」―そのとき ―緩和医療と人生への支援

宮森 正

「喪失」―心の空白への援助 ―悲しみを支えるワーク

福山和女

生きること、死ぬこと、愛すること ―生と死の教育における基本的課題

平山正実

「生きる」ことへの保障と支援 ―今日の社会福祉の目指すもの

市川一宏

「生きる場」としての社会福祉施設

市川一宏

「生きる歩み」を地域で支える ―在宅福祉サービスの本質的課題

市川一宏

「中年期の危機」―人間へのより深い理解

福山和女

「社会の中で治す」―精神保健福祉サービス

前田ケイ

「在宅の力」―訪問看護に学ぶ

紅林みつ子

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詳細もくじ

生きる「今」と向き合う ――「生きる」視座に立った医療 

岡安大仁

医療とは何か
治療が目的
インフォームド・コンセント
医師中心から患者中心の医療へ
「リビングウィル」の重要性
「POS」(問題志向診療システム)
ホスピス運動について
    現代ホスピスの始まり―シシリー・ソンダースさん との出会い 
    ホスピスの歴史
医療と福祉の共働
むすび

 

「はじまりの記憶」―子どもの「生きる」かたち 

白井徳満

贈っていいものは、子どもが幸せになる「能力」を贈ることではないかと考えています。幸せになる力を贈る。それは何かといえば、子どもを正しく豊かに愛する。一生力になるような、すばらしいほめることばを日々、子どもに与えるということです。

新生児を知ること 
    一生に関わる問題 
    いつから見える? 
    いつから聞こえる? 
    「ひとり笑い」―感情 
    ● 「記憶」

動物の子育てから学ぶ 
    「におい」 
    「インプリンティング」―刷り込み 
    自分の子どもを育てるしくみ

赤ちゃんが育つからだのしくみ 
    母親からもらう「免疫」 
    「サーファクタント」 
    可愛いがられるようにできている

新生児―三つの問題 
    「超未熟児」 
    「難産」 
    ● 「奇形」

施設の子どもたち 
    増える子どもの「虐待」 
    「不登校」と「ひきこもり」 
    大人の世界の反映

虐待といじめ 
    施設における「いじめ」 
    自分がされたようにする

傷ついた心の歴史 
    子どもの心を殺す親 
    ● 川田先生の話

虐待された子への働きかけ
子どもへの最良の贈り物 
    幸せになる能力 
    夢を共有する 
    ● 「ストローク」を贈る―うれしくなることば

 

「今日」からの生き方で余命が変わる 

中島宏昭

病気の変遷と寿命
「肺ガン」急増の背景にあるもの 
    「免疫力」の低下 
    ● 診断技術の進歩「告知」をどうするか 
    家族は「知らせたくない」 
    ● 抗ガン剤の「有効」とは 
    「副作用」の告知

幸福追求権と知る権利
    人はだれでも必ず死ぬ 
    ● 「知る権利」―人生を充実させる 
    ● 患者の「気持ち」を尊重

余命を決めるNK細胞
    落ち込まない人は強い 
    ● NK細胞とは何か

NK細胞の活性を高める
思い込みでガンが再発
今日からの生き方で余命が変わる
患者さんに教えられたこと
    過去が変われば未来が変わる 
    ● 子への最後の贈り物は「親の死」

 

「ガン」―そのとき ―緩和医療と人生への支援 

宮森 正

ホスピスというと「最期を迎えるところでしょう」とよくいわれますが、そうではありません。逆説的になりますが、やはりこの世の未練を可能な限り提供できないといけない。つまり、患者さんも先が分かっている。我々も分かっている。そのなかで一日をどう生き抜いていくか。そういうことが提供できないと駄目なのです。しかしそれが何かというのはなかなか難しい。

「ケア」の時代
    「キュア」から「ケア」へ
ガン―そのとき 
    三人に一人
難しくなった「静かな最期」 
    昔はみな「衰弱死」だった 
    ● 誰がどう面倒を見るか

緩和ケアとは
    疼痛管理にとどまらない
緩和ケア病棟の患者 
    死因のトップ―肺ガン 
    ● 様々な症状と転帰

ガン告知をどうするか 
    増えた「ガン告知」 
   早い方がいい

ガン告知の問題点 
    末期状態での告知 
    症状を取った上で

告知された患者やその家族への対応
    信頼関係が基本
患者や家族の心理
    ガン告知された時
    ● 再発や末期ガンで治療はもう困難と言われた時

最後の支えは家族
    残された時間のプライオリティ
緩和ケアやホスピスに望むもの
複雑な患者の立場
痛みの緩和
    モルヒネによるコントロール
医療者の立場
    よりよい方法の模索
    ● 苦痛に対するケア
    ● 患者を追い詰めない
    ● 鎮静、セデーションについて
    ● 「生きていてよかった」というケア
    ● 在宅ホスピス

 

「喪失」―心の空白への援助 ―悲しみを支えるワーク 

福山和女

「喪失」とは何か
学習することの意味
喪失の作業のプロセス 
    「否認」の段階 
    ● 「怒り」の段階 
    ● 「悲しみ」から「交渉」の段階へ 
    ● 「受容」の段階

喪失の種類
理論どおりではない喪のプロセス
個人の独自性を尊重する
    ストレススケール
    ● 軍人の父親の葬式 
    ● 刑務所にいる息子に会った九十五歳の父親

グリーフワークの必要性 
    事例―父親の死に目に会えなかった次男 
    ● 次男に対する指導―怒りを表現する 
    ● その人の気持ちの在り方を理解する

高齢者は喪失体験のベテラン

 

生きること、死ぬこと、愛すること ―生と死の教育における基本的課題 

平山正実

・・・自分の病気にせよ他者の病気にせよ、病いや死というものは確かに悲しいものであり、辛いものであるけれども、そのなかに先ほどいいましたように、人間を賦活するメッセージ性があるのです。それが、その人の大きな生きがいとか、他者を助けようとするインセンティブ――動機づけになりうるということです。

文学における死の問題
小説『みれん』に見る死
健康者と死にゆく者の間の深い溝
介護者をむしばむ「燃え尽き症候群」
病者と健康者の心の距離の変化
追う者と追われる者の逆転
両価的感情による疲弊
心の疲弊が起こす人格障害
生と死の教育の役割
疲弊と心の防衛
人の歴史を縦断的に見る
その人の生涯からのメッセージをすくい上げる
思考の転換―否定から肯定へ

 

「生きる」ことへの保障と支援 ――今日の社会福祉の目指すもの 

市川一宏

社会福祉とのかかわり
社会福祉の変遷
    貧困対策が中心の明治・大正時代 
    ● 富国強兵策時代の戦時下 
    ● 戦後対策としての昭和二十年代 
    ● 経済成長優先の昭和三十・四十年代 
    ● 経済至上主義への反省

在宅福祉の展開と「生活の場」として 
    入所施設をめざす昭和四十・五十年代 
    ● 利用者の範囲が広がる 
    ● 原点を問われた暗黒の一〇年

社会福祉の反省点
    家族の役割への過重な期待と安易な責任転嫁 
    「排除」社会への警鐘 
    ● 個人ではなく集団の優先

今日の社会福祉の目指すもの 
    個人の意思は尊重されてきたか 
    ● 「生きる」ことを支える 
    ● その人らしさを尊重する 
    ● 生きる希望を支え続ける 
    ● 養育や家族介護への問いかけ

医療と福祉の出会い

 

「生きる場」としての社会福祉施設 

市川一宏

社会福祉施設が目指すもの
社会福祉施設をめぐる動向 
    (一)契約型施設の登場 
    ● (二)通所型施設の登場 
    ● (三)相談型施設の登場 
    ● (四)小規模施設の登場 
    ● (五)住宅型施設の登場 
    ● (六)保健医療と福祉の接点 
    ● (七)滞在型施設

社会福祉施設を「生きる場」にするために
社会福祉施設を「生きる場」にするための基本的考え方 
    (一)リロケーションの弊害をなくす 
    ● (二)利用者主体のサービスを考える 
    ● (三)地域にある施設としての役割を強化する 
    ● (四)問題を広く共有化する 

    (五)個人にあった生活空間の確保
社会福祉施設を「生きる場」にするための個別対応
    (一)意見表明が難しい人への対応 
    ● (二)「家族がすべき」という考え方の問題 
    ● (三)「虐待とは何か」―明確に確認すること 
    ● (四)普段のように、利用者の自己実現を支える

 

「生きる歩み」を地域で支える ――在宅福祉サービスの本質的課題 

市川一宏

・・・本人が満足していたらそれが最善だという見方もあります。多少汚れていても、本人がここにいたいというならそれが最善なのです。こちらが首に縄を付けて引っ張って、「この施設はきれいだ」といって入れても、それは本来の姿ではない。

なぜ在宅福祉サービス・活動が必要になったのか
    家族、地域の変化と財政事情 
    ● 社会福祉のとらえ方の変化

在宅福祉サービスの特徴
    在宅福祉サービスの限界 
    ● 点在する利用者に対応する 
    ● 組み合わせの必要 
    ● 利用者とサービスをつなぐシステムの必要性 
    ● 関係性を維持し続けること

在宅福祉サービスの内容
    利用支援・利用啓発サービス 
    ● 予防・福祉増進サービス 
    ● 在宅ケア 
    ● 「住まい」を強化するサービス 
    ● 滞在型サービス 
    ● 生活環境改善サービス

在宅福祉サービスの基本的視点 
    分権化の推進と草の根活動 
    ● 推進者の広がりと調整機能 
    計画化と説明責任 
    ● 利用者の権利保障 
    ● 総合的日常生活支援

在宅福祉サービスの本質的課題 
    利用者の意思と不安定な生活環境の狭間を埋める 
    制度の狭間を埋める 
    ● 生活・生命・存在の狭間を埋める在宅ホスピスの展開 
    ● 生と死を見つめる

 

「中年期の危機」――人間へのより深い理解 

福山和女

「親子」とは何か
中年期とは何かを考える 
    中年期とはいつ頃か
医療法の改正と病院経営
医療現場に社会福祉が導入された理由
患者と家族の生活支援へ
中年期に直面する危機 
    予測できない危機
中年期の親子関係 
    事例―疼痛が消えた母親 
    ● 専門知識に欠ける専門職 
    ● これまでの医学モデルの限界 
    母親の思いを理解すること

中年期の夫婦愛
    事例―他者の支援を拒む献身的な夫 
    看護師との対立 
    専門家がくみとれなかった夫婦愛 
    自分たちの理想に合わせようとする専門家

問題解決の基本 
    人へのより深い理解

 

「社会の中で治す」――精神保健福祉サービス 

前田ケイ

「二つの疑問」
    「十年一日」のサービス 
    システムに問題

日本の精神医療の現状と問題点
    どこで受診するかで決める 
    長すぎる入院期間 
    社会的サポートの重要性 
    WHOの勧告

薬物治療が中心であることの問題点 
    少ない治療メニュー 
    心理・社会的治療も

SST(Social Skills Training)
    「陰性症状」とSST 
    事例―笑顔を取り戻す 
    長期入院は「効果」なし

精神科病院の情報開示
家族を支える連携システムの不備
精神保健福祉の社会資源の不足 
    進まない「障害者プラン」 
    「べてるの家
の実践 
    SSTの適応
精神保健福祉のマンパワー不足 
    欲しい生活支援のサポーター 
    ロールプレイの活用 
    「一緒に」という視点 
    不可欠な地域住民の支え

 

「在宅の力」――訪問看護に学ぶ 

紅林みつ子

寝たきりの方たちの訪問をして感じるのは、九十歳を過ぎて年齢的な老年性の痴呆が少しある方たちは鋭くて、普通の方たちは遠慮があっていえないことでも、逆にストレートにご自分の意見をはっきりおっしゃいます。そのことばには本当に真実があると思います。

在宅ケアの変遷
在宅ケアのポイント 
    意思決定がもっとも大切 
    療養生活の場を考える 
    ● 初めに十分な意思確認を 
    ● 退院は必ずしも全快ではない 
    自分らしく生きられるように生活を作る

事例―在宅ケアを望んだ夫婦 
    固い意志に医師が根負け
    献身的な夫が叩いた 
    ● 夫の思いの深さ 
    ● 突然の妻の死 
    ● 一ヵ月後の夫の死 
    ● 二人が在宅にこだわった理由 
    ● 「本来のありよう」を受け止める

事例―お母さんをお風呂に入れてあげたい
事例―最後に弾けたピアノ 
意思決定には本人も参加する
介護される人の尊厳を守る
ひとが最後まで持っている力
訪問看護師として心がけていること

これからの医療と福祉―あとがきにかえて

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