私の医療ノート  下  
総合人間学への展望
 

水野 肇著 / 四六判上製 254頁 / 
品切れ重版未定 税込2100円 / ISBN4-89007-038-9 C3347 

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「医学は人間を相手にした学問である。この医学と人間との接点をめぐって、数々の問題が起きたのも、今世紀後半の特徴である。かつては、文明国を制していた宗教の力が衰え、科学がそれに変わろうとはしているものの、科学は、純粋な学問であって、人間性を律することはできない。そこから、新しい人間学の構築が求められているのだが、それは一朝一夕にはできない。」あとがき より

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私の医療ノート  下 総合人間学への展望 

内容詳細


第三章 文明と病気

私たちが問題にしたいのは、ただ、ちょっと血圧が高いとか、糖がでているというだけで、他にはさしたる異常のない人を、病人扱いすることが正しいのかどうかということである。

たしかに現在の医学のルールからいえば、これらの人たちは「病人」という規定になるだろう。その根拠は「異常があるので、正常つまり健康人ではない」という解釈なのである。

だが、この正常でないという人が六十五歳以上の大部分を占めるという”現実”にも注目すべきである。そうなると、老人では「異常」な人が正常な人の数倍以上もいるということになる。現代の医療では、少し血圧が高かったり、糖がでていたりしたら「高血圧症」とか「糖尿病」といった診断が下される。そうなると診断を下された人は、”患者”ということになり、気分的にも滅入ることになる。これでは、いたずらに医療が”病人”をつくっていることになりはしないか。( 「 あいまいな「正常」概念」より抜粋)


1 一病息災
    高齢化社会という言葉の落とし穴
    健康から一病息災へ
    あいまいな「正常」概念
    一石二鳥の一病息災
    PHCシステム確立の必要性

2 ガン
    複雑な症候群
    対ガン運動の成功
    ガン制圧の条件

3 心臓病
    文明と心臓病
    医療機器と患者の接点


第四章 生と死

医師は元来、最後まで命を救うことを目的としている天職である。だから、どうなったら死んだという発想をするのは誤りで、あらゆる生の条件や可能性がなくなったときに、はじめて「死」と判定すべきものである。それを、たとえ患者が希望しても、患者を殺すことは医師の倫理を大きく逸脱したものであろう。(中略)

人間は脳幹だけが生きている、いわば植物人間であっても、立派な「生」である。これをお互いに認めるというのが、ヒューマニズムの第一歩である。(「討議への疑問」より抜粋)

1 脳死
    脳死の判定
    脳死と移植

2 安楽死
    心と論理の格闘
    社会混乱の危険性
    討議への疑問

3 出生
    人体実験
    試験管ベビー
    出生コントロール
    医療技術と社会

4 死生学
    ほとんどの人は、ガンか心臓血管系の病気で死ぬ
    ガン医はもっともガンを恐れている
    死を考えるトレーニングが必要

5 医の倫理
    チフス菌事件
    日本ケミファ事件
    心臓移植
    人間性の復興


第五章 公害

1 現代の公害
    大型化の傾向
    安全性無視の企業
    国が考える問題

2 公害例
    有機水銀禍
    スモン病
    四エチル鉛
    サリドマイド訴訟
    ビタミン剤の功罪
    米ぬか油中毒事件
    公害医事裁判の方向

3 公害の問題点
    公害安全省の設置を
    基礎研究に予算を
    防御装置に神経を

4 公衆衛生
    政治姿勢と学者の態度
    恐るべき精神公害


第六章 医学と文明

医学は科学にもとづいたサイエンスであるのはいうまでもない。しかも、人間を対象としている。しかし、ほんとうはひとりひとりの人間には個性があるのと同じように、医学的にもずいぶんちがうものである。

にもかかわらず、医学としては、人間全体を扱わなければならないので、いきおい、平均値のようなものが正面に出てしまう。それが正しくないとはいえないにしても、適切でないということはおおいにあり得るのである。(「個の医学の必要性」より抜粋)


1 医学と文明
2 医学と思想
    試験管ベビー報道の扱い方
    キリスト教的な基本の尺度
    ロボットに支配される恐れ

3 アナログ型医学
    アナログ時計とディジタル時計
    ある心筋梗塞死の教訓
    パターン認識による診断の重要性
    アナログ医学化する小児科学
    注目を浴びる親子関係の医学

4 個の医学
    個の医学の必要性
    プラシーボ現象に見る個人差
    HLAと個の医学
    HLAにみる民族差

5 リハビリテーション
    「医療概念の変容とリハビリテーション
    リハビリテーションは各科にある
    医学的リハビリテーションとリハビリテーション医学
    リハビリテーションはチーム医療である
    リハビリテーションは初期で決まる
    高齢化対策としてのリハビリテーション

この書籍は品切れ、重版未定です。

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