農業への空気イオン化応用に関する研究例

「空気イオンの植物栽培への応用」
A. L. チジェフスキー  

ソ連邦中央イオン化科学研究ラボラトリー所長
"Aeroionifikatsiia v narodnom khoziaistve", 1960
安倍三史訳  「空気清浄」4:4,55-61,1966

『空気マイナスイオン応用事典』第4章 関連論文-1より抜粋


はじめに

その助けによって植物の生長を刺激することのできる物質や方法がたくさんあることはよく知られている。刺激現象を説明するために、新しい理論が次々と構築されている。化学的および物理的刺激物の作用は、原形質と酵素のコロイド状態の変化に帰するとしている。

この変化が次は物理―化学的プロセスの速度を変化させて組織全体の活力に影響を与える。種子を中性および酸性溶液に十分に浸すと、インゲン豆と大豆の種子の子葉は精力的にpHを変化させる。それは種皮よりももっと精力的であることが認められている。また、pHの変化に至っては、原形質の外層によるイオン吸着が行われることも証明されている。

明らかに、マイナス空気イオンの作用と残効は、タンパク質および脂質―組織のコロイド―それに酵素がイオンを同化するという作用によるものと思われる。穀粒の中に存在するタンパク質の粒子は、その表面にマイナスの電荷を帯びている。マイナスの電荷を外部から付加すると、組織反応を促進することができよう。

 

テンサイ、小麦、ライ麦、エンバク、クローバーおよび亜麻の種子の発芽実験

「テンサイ」では、播種後5日目で対照群よりも4.1%多く発芽し、この優位は実験終了まで同じレベルで保たれた。また7日間で、対照群種子の発芽率71.8%に対して試験群種子では76.2%であった。

「小麦」は、播種後4日目で試験群が対照群より22%多く発芽し、5日目には17%多い。その後は、対照群がわずかだけ試験群を追い越している。このデータは、空気イオン供給がいかに急速な発芽と強い発芽力を刺激するかということを示している点で興味深い。このことは、播種後第5日で、対照群では全播種数の58.8%が発芽したのに対し、試験群では75.7%であったことからもわかる。

「エンバク」の種子発芽率は反対の現象を示した。初めは対照群が先行していたが、18日目になると試験群は4%だけ多くなっている。

「クローバー」の種子の発芽率は、さまざまな結果を出したが、第1回実験では、初めは試験群が1.3%多く、第16日にはこの優越は4.3%に達している。

「亜麻」の種子の発芽率では、試験群が対照群の上には出ない。

「ライ麦」の種子発芽率(種子数58,000)は次の4群に分けられる。第1群は、試験群種子の発芽率が対照群種子よりも超越するもの。第2群は、対照群種子の発芽率が試験群種子よりも超越するもの。第3群は、試験群種子の発芽率が初めはグングンと対照群種子を追い越して行くが、終り頃には追い越し率が小さいか、または少し遅れるもの、第4群は、試験群種子の発芽率が初めは遅れるが、終り頃には対照群種子を追い越すものとした。

この4群に属するものを%で示すと、第1群は31.6%、第2群は10.5%、第3群は52.6%、第4群は5.3%となる。第3群が最も良く、第1群がこれに続くと考えられる。一般的傾向としては、次のように決定できよう。

すなわち、空気イオン供給は種子の発芽力を全般に高めるか、またはしばしば見られたように発芽力を播種後の初めの日々に集中させる。農業にとっては発芽が長びかず、最も短期間に完了することが有利である。というのは、このような場合には天候の変化に逢う可能性が明らかにより少ないからである。

ここでは、第1群と第3群とを合わせて全例の84.2%を占めていることを指摘しておこう。実験の初めと終りの、試験群と対照群の相関を表に示す。

 

試験群種子と対照群種子の発芽率の間に、また実験の初めと終りの間の相関を求めると「r=0.49」となる。

ここでは次の結論に達することになる。すなわち、実験の数は最終的な答えを得るには不十分であったが、それにもかかわらず、試験群種子が発芽率では、初めは対照群を追い越すが、終り頃には対照群に遅れると考えられる根拠がある。一般に、試験群が対照群を追い越すかどうかについては60%対40%の実験データで肯定的な答を出す可能性がある。

従って、マイナス空気イオン供給の「ライ麦」の種子の発芽力に対する作用は立証されたものと考えられる。要約すると、空気イオンは初めの日々に発芽率を高める。言い方を換えると、発芽率がより一斉になるということである。

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