畜産への空気イオン化応用に関する研究例 |
「『仔ウシ』の新陳代謝の強化および強壮作用」
G.K.ヴォルコフ1、I.A.アンドレエフ2
1.全ソ実験獣医学インスティチュート 2.アレクサンドロヴォ実験農場
Veterinariia 1966, 43:4, 92-93
『空気マイナスイオン実用ハンドブック』第3章第7項より抜粋
■マイナスにイオン化された空気が、動物および家禽の生体に対して好ましい作用を及ぼすことが確認されている。マイナスイオン化された空気によって、動物の代謝が向上するとともに、成長発育が改善されるのである。フレノフは空気イオンに曝露されたメスウシから生まれた仔ウシが、消化不良に罹りにくいと報告している。
我々は仔ウシの生体に対する空気イオンの一般生物学的作用を検討する目的で、仔ウシ用施設内の空気イオン化を行った。イオン化された空気が生体を強化し、生まれて間もない仔ウシの罹患率を低下させる要因であることを明らかにするためである。
■予防診療所内に人工的イオン化を目的として、放電式空気イオン化装置を2器設置した。これらの装置は空気1cm3あたり、約1,000,000個程度の空気マイナスイオンを生じさせることが可能である。我々は予防診療所内の空気を150千〜300千個の用量で、主に夕方から夜間にかけて6〜8時間、20日間にわたってイオン化させた。
実験群10頭、対照群10頭からなる仔ウシについて、実験期間の20日間とイオン化終了の1ヵ月後に、臨床的観察を行った。血液とガス交換について平行して検討を行った。仔ウシに対する給餌は、この農場で定められた基準に厳格に従って行った。その結果、実験群の方が対照群に比べてより活発であることが観察された。
■空気イオン化実施後には、実験群の仔ウシが対照群にくらべて成長がより良かった。さらにイオン化された空気内に15〜20日間置かれた後には、実験群の仔ウシで1日あたりの体重増加量が647gだったのに対し、対照群では583gであった。
仔ウシの消化不良罹患率が低下したこともまた注目に値する。実験群でこの疾患に罹ったのは2頭のみで、罹患期間も2〜4日間だったのに対し、対照群では5頭(50%)が罹患し、罹患期間は3〜7日間であった。イオン化空気内に置かれた仔ウシは、消化不良を患い成長に遅れを取ったものの、すぐに健康な仔ウシとの差は全く見られなくなった。
その後1ヵ月間の体重増加量は、実験群で平均24.5kg、対照群で平均16.2kgであり、実験群の方が8.3kg多かった。実験群の仔ウシでは対照群に比べて、血液中のヘモグロビンおよびカタラーゼ含有量がより多かった。
■肺におけるガス交換を検討する目的で、仔ウシを数日間マスクに慣らせた後、10日目および15日目に呼吸運動、肺の分時呼吸量、呼気中の炭酸ガスおよび酸素含有量を測定した。これらの試験はGBK−1型装置で行った。
空気イオンに曝露された仔ウシの外呼吸では、肺換気の改善が特徴的に見られた。このことは分時呼吸量の増大(7.5リットル)、炭酸ガス排出量の増大、酸素消費量の増大というかたちで表れたのだが、これは新陳代謝が強化されたことを裏付けるものである。
■生体に対して空気イオンが持つ一般生物学的および治療的作用と並んで、空気イオンには畜舎の空気を顕著に改善するという作用も見られる。予防診療所内の空気を人工的にイオン化することで、細菌および塵埃による空気環境の汚染を急激に低下させることが可能である。
イオン化前の5分間ではペトリ皿に800〜2,000個の細菌が落下したのに対して、イオン化1時間後の5分間では40〜130個で1/15〜1/20になった。普通空気中に存在する塵埃は、電界内においてマイナスの電荷を獲得したのちプラスに帯電した壁、天井、床に向かって速やかに引き寄せられ、約1〜2mmの層を形成するに至る。
このため、このような塵埃を湿った雑巾で定期的に取り除き、汚れた部分の清掃を行うことが不可欠となる。
■このほかにさらにもうひとつ、空気イオン化の持つ衛生学的作用を挙げることが出来る。すなわち、脱臭作用である。予防診療所内に、とりわけ胃腸疾患の見られるときなど、し尿の臭いが生じた場合でもイオン化装置の運転制御盤の電圧を100〜110ボルトにまで上げれば、軽度のオゾン化の働きにより空気が清浄化された。
以上のことに考慮すると、ここで挙げたような用量での空気のマイナスイオン化は、生体に対する強壮作用を示すと同時に、仔ウシの消化不良罹患率をある程度低下させうるといえる。