病の宇宙誌
山口 昌男 著 / 四六判上製 294頁 /
税込2507円 / ISBN4 89007-065-6 C0095〔ご注文はこちら〕〔出版案内表紙へ戻る〕
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〔文芸関連書籍へ戻る〕「人はそれぞれの死を抱えている、と文化人類学者の著者はいう。病気は、本人も気づかないうちに何度もその人の人生に忍び込み、生の中にある死を形成する。その繰り返しが全体を蔽いつくすと死は完成するが、それまでは意識するしないにかかわらず、生の中で死は徐々に成長することになる。」 「毎日ライフ」
「ここ十数年の間に「病む」という言葉は、たとえば「病める時代」といった形で、メタファーとして様々な文脈を与えられ、比較的気楽に使われるようになってきた。しかしながら、誰でもが経験的に知っている、肝心の「病む」というのはいかなる行為であるのか。」 本書冒頭より
検索語:医療人類学,文化人類学,医学,文学,映画,民俗学,歴史,医学史,表象文化
病の宇宙誌
もくじ
T
・病の宇宙誌
身体の囲い込み
「健康」という神話
身体による正と負の祝祭空間
病という演劇
医者と患者の人類学
苦痛の宇宙
メッセージとしての病気
病気は、それ自体、人体を通して何ものかが立ち現れる過程であるという意味において、演劇的状況を含む。事実、多くの文化において治癒という行為儀礼=演劇として演じられる。しかし、われわれは、こうした病気という形で送られるメッセージが、どこで発信されているかということも、またそのメッセージを読み取る技術も、充分には開発していない。あるいは喪失してしまっている。病気は、その快・不快はさておき、日常生活では喪われている、何ものかとの対話を再び開始する機会であるともいえよう。(「メッセージとしての病気」より)
・精神医学と人間科学の対話
1 科学のパラダイムの転換のなかで
新しいモデルの獲得をめざして
<道化>への着眼
ヨーロッパのもうひとつの流れ
祝祭としての歴史
フローレンス島調査
<文化>と<排除>
2 両極性の出会い
兆候空間優位性
躁病と祭り
<執着気質>の倫理
人類史的考察
稲作文化とイモ文化
<魔女狩り文化>
ネオプラトニズムの屈折
文化としての学問へ・治癒の文化
病との共生
近代医学の発生
病気は異物
明治の医学――否定された伝統医療
表の体育・裏の体育
パフォーマンスとしての治癒
ナイジェリアの治療
アマゾンでの集団治療
神々の巡礼
禁断の破綻
高血圧は病気か?
医学が病気をつくる
ライ病にみる誇大宣伝
文化が病気をつくる
患者と一体になる治療
「直す」よりも「直る」こと・文化としての医療
・臓器移植と医療人類学
・死を引き寄せる技術
・劇場としての病院
芝居がそうであるように、病気は我々を日常の生活とは異なった時間と空間の中に連れ去ってしまうのである。苦痛は時間と共に忘れ去ってしまうので、この病気体験は、時と共に、懐かしさと共に思い出されるようになる。自分の住んでいる場所が異なったものに見えて来て、ふつうあまり見なれない人達が現れて来て、自分もふつうの日々と異なった体験の流れの中に入るという意味で、病気体験は、劇場ばかりでなく祭り体験と似ていなくはない。 ・歯と文化人類学
U
・規範と逸脱
文化と二つの気質
祝祭史観
幻想の文化
文化と逸脱
・学力の文化的前提
・スリナムのアフロ=アメリカ系文化における死者儀礼と異類婚姻譚
スリナムのトリックスター神話
トリックスター神の語られる場
ナンシ噺の語られ方
死のフォークロア――比較の視点
結びにかえて・人類最後の祝祭のとき
死と再生の拠り所は失われた
背水の陣で臨むしかない結末・知覧の印象と文化人類学
・映像の世界の文化英雄たち
管理の女王と遊戯の王子
脱走――「阿呆船」に乗って
沈黙のアイヌ系と不機嫌のインディアン
ナボコフの悪夢
詩という血が流れる映画・西欧中世の説話的世界
はじめに
キリストの冥界下降
アイルランドの中世説話文学への貢献
蘇生譚の成立
地獄論の系譜
おわりに
V
・エイズ現象と現代社会 立川招二VS山口昌
ホモセクシュアル
風俗の病なのか
アフリカ→ハイチ→アメリカ
「けがれ」と見る構造
自然生態系の反乱
エイズと共生せよ
「ふつうの生活」とは
心理感染を広げる
日本人のエイズ化・生物学と文化人類学の周辺 飯島衛VS山口昌男
アフリカ
近親相姦
昔物語
逸脱
笑い
異人
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